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人が何かに熱中して取り組む時間はもっとも気持ちの良い状態なのである

私は、高校2年の10月になるまで、何か(スポーツ、研究、社会活動)に熱中したことが一度もなかった。

私が能動的に活動することといえば、教室の隣の席の女子と会話することと、釣りをしに海や池や川に行くことぐらいだった。

小学校、中学校と部活動をしなかったので、中学の担任の教師に「気象観測クラブ」なるものを作られ、参加させられたことがあったほどだ。

学校の予習や復習などしたこともなかった私が、あることをきっかけに目覚めてしまった。

「受験勉強」というものにである。

午後4時に帰宅してから午前0時まで毎日机に向かった。2回の正月も、夏休みもだ。

なぜだか、努力できた。いや、努力していると思ってもいなかった。

このときの「熱中体験」は、私に物事への取り組み方を教えてくれた。

自らの全てをかけて何かに取り組むこと。

受験日と合格発表日を迎え、これでもう勉強しなくていいんだとホッとする気持ち以上に、受験勉強がもうできないのだという寂しい気持ちが優っていた。

大乗仏教、禅では、「只管打坐」や「さとり」や「三昧」という言葉で、人が余計なことを考えない状態は気持ち良い心持ちになること。

そのサラッとした心もちを目指すことを推奨している。

人が何かに熱中して取り組むとき、他の余計なことを考えない。
その状態こそが、人にとって、もっとも気持ちの良い状態なのである。

私が、「もっと受験勉強をしたい」と思ったのは、受験勉強に取り組んでいた時間が気持ち良い状態だったからだったのだ。

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